絵の中の静寂感
絵の中の静寂感
私は絵の中に静寂感を現す時に主に寒色系の色彩を使う。
青系の表現である。
たとえばこの猫の絵である。
草原の中で
背中をこちらに向け、ふと顔を横に向けた瞬間を描いている。
そこには
草原の風が吹き、風に乗って草の匂いが運ばれてくる。
猫は特有の研ぎ澄まされた感覚で全身を使ってその風の心地よさを味わっている。
そこにたゆとうているのは静寂である。
空は深まり、青色が心の静寂を促す。
見る者の静寂な心
この絵は鑑賞者の静寂な心を呼び覚ますために描かれたものだ。
同時に、猫のような鋭敏な感覚を惹起させている。
都市生活に慣れた人間は
日々のあわただしさに翻弄され、自らの持って生まれた能力や才知を生かす時間が追いやられている事に鈍感である。
その能力や才知はまず、静寂心から誘導される。
猫の静寂を心に繋げて
静寂を共有してほしい。
静寂から見えてくるもの
静寂に浸ると見えてくるものがある。
それは世界のありさまである。
仕事や日常に埋没していると、狭い人間世界に閉じ込められて
世界の自然なありさまがみえなくなる。
静寂に心を浸すと人間は本来の感覚を少しずつ取り戻し、
風の音や草の匂い、鳥たちの声に耳を傾けるようになる。
寒さや暖かさ、湿気、光の濃淡、土の感触が肌感覚であらためてバージョンアップされるだろう。
そうあらんことを願う。