張り子の魅力
張り子ってそもそも何?
私は張り子をつくっています。
そもそも張り子とはどういうものでしょうか?
私なりの考えを述べてみたいと思います。
まず私にとって張り子とは和紙で出来ている造形作品です。この和紙で出来ているという事が私にとってはとても重要です。理由を簡単に言いましょう。
和紙にはぬくもりがあるからです。
紙の中でも和紙は特にぬくもりがあります。
私は和紙を使って今までいくつかの動物をつくってきました。
犬、うさぎ、虎、ねこ、鳥、馬などなど・・
どれも自分で言うのもなんですが少なくとも和紙のもつぬくもりによって命を吹き込むことができました。
張り子の定義をもう一つ挙げましょう。それは張り子の中身は空洞であるという事です。
空洞はどうやってつくるのでしょう。
私の場合は油粘土で型をつくり、水で濡らした薄い和紙で全体を覆います。
更にそこに糊で楮(こうぞ)100パーセントの和紙を少しずつちぎりながら貼ってゆきます。
ここで使う糊ですが、私はでんぷん焚き糊を使っています。
なぜか?昔ながらの製法で機械でなくひとの手が多く加わっているからです。ほとんど薬品が加わっておらず、自然だからです。
和紙が乾くと固まってきます。固まるとカッターで胴体を切り、中身の粘土を取り出すのです。
再び糊のついた和紙で胴体をつなぐと中身が空洞の張り子の出来上がりです。
いかがですか?
なかなか手間でしょう?
さらにこれに日本画で使う胡粉(ごふん)という貝殻を粉状にしたメディウムを膠(にかわ)で溶いて塗ります。
これが乾くとカチカチに固まりしかも着色しやすくなります。(ただし和紙の質感をメインに出したい時は胡粉は塗りません)
着色は胡粉の上なら日本画で使用する水干絵の具を使います。
胡粉を使用しない場合はアクリル絵の具を使います。
ざっと説明すると
だいたいこんな感じです。
なぜ張り子なの?
面倒くさいですよね。しかも今の時代で張り子ってメジャーじゃないし、それどころか知らない人もいるんじゃないでしょうか。
郷土土産の伝統工芸品としては主に縁起物として今も販売されています。
私のつくる張り子はある程度決まった形の伝統工芸品の形状にこだわらず、よりリアリティーを持たせたものになっております。しかし、粘土でそのまま造形したり、樹脂や石膏や木彫りでダイレクトに作らず、
なぜわざわざ工程の煩わしい張り子なのか?
紙は呼吸しており、自然界と繋がっている点で
縄文時代の土偶に通じるものがあると思うからです。
私は土偶が大好きなのです。
土偶は土を、張り子は和紙を使って創られております。どちらも風と水と地が緊密に関係しています。しかも土偶も張り子も内部が空洞となっています。
これは理屈ではなく、私にとっては自然界と密接に関わっている芸術だと思うのです。
手作りの意味
張り子は手作りです。今風に言えば〝ハンドメイド〟です。
手作りのものには魂が宿りやすいと思います。
私は魂を信じます。
怪しいですか?でも正直な気持ちです。
縄文時代の作家も魂の実在を信じていたはずです。でないとあんな作品は生まれないでしょう。
魂は自然界と繋がっていて、自由自在です。
うつくしいものです。
憎悪や呪いや悲嘆などは魂ではありません。そういうものは想念です。現代社会は想念をメインに据えたものをシリアスに価値化していますが幻だと思います。
私は想念でなく魂を宿らせるものをつくりたいのです。魂は実在であり、風や新鮮な水のように自由であり、圧倒的な静寂です。樹や石や土の上に置いても違和感のないものです。
〝自然の中に置いてみても違和感がない〟ものを創ること
これがわたしのテーマであり、手作りの意味なのです。